フランスおよびフランス語の魅力はどこから来るのか?
フランス語の勉強を始める前に、フランス語またはフランスについての本を探しては読んでいたことがあった。
フランス語に限らず、外国語の学習は時間とエネルギーを要するため、最初に選択や方向性を誤れば、損失が大きくなるのを恐れたからだ。
私も他の例にもれず、なるべく効率的にものごとをやりたいと思っている。
そういうことで、この本を何気なく読んでいた時に、なぜこれだけ多くの人がフランス語やフランスに魅了されるのかを説明しているような箇所に出会った。
フランス印象記(講談社学術文庫)
桑原武夫
320円
p189
かつてヨーロッパの知った高雅なもののすべて、感受性、趣味、風習の高雅さ、この言葉のもつあらゆる意味における高雅さ、そのすべてはフランスの作品であり、創造である。 ニーチェ
p190
フランスへ行って私のまず感服させられたのは、文化尊重の念があつく、またその設備のすぐれたことであった。コレージュ・ド・フランスのようなものを他のどの国がもっているだろうか。ヴァレリ、ジルソン、ベディエ、ランジュヴァンなどの碩学の講義を暖かく清楚な教室で、何人にも無料で聞かせるばかりか、実験もさせ、また別刷活版印刷の教材を講義前に事務員がくばってくれ、前回欠席の方にはその分も差し上げます、などというのである。図書館、美術館などのことはあえていわない。学芸にたずさらる人間として、いわゆるフランスの弱体よりもさきに。先ずこうした事実の有難さを通関したことを私は恥としない。
文化の尊重はその底に文化への信念がなければ成立しない。そして自国の文化への十分の自身がないとき、文化一般という観念は宙に浮く、従って脆弱となるおそれのあることも言をまたない。私は一般フランス人の自身の強さに感心した。ことに祖国の文化の混乱状態を思うて強く打たれるものがあった。
著者の桑原武夫氏は、京都大学名誉教授で、アラン「芸術論集」、スタンダール「赤と黒」の訳者として知られている。
フランス語またはフランスが多くの人を魅了している理由のひとつはこういうことではないかと思う。
以上